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未DVD化故になかなか観ることの叶わない作品を発掘する《グラインドハウス映画発掘報告》の第2回目です。
本日は邦画作品。
《グラインドハウス映画》なんて言ったら怒られそうなくらい有名なのですが、少しばかりスキャンダラスな話題にも尽きない2作品、《コミック雑誌なんかいらない!》と《スゥイートホーム》です。
スゥイートホーム コミック雑誌なんかいらない!
まずは《コミック雑誌なんかいらない!》。
監督は、2008年の《おくりびと》のメガヒットが記憶に新しい滝田洋二郎。
出演は永遠のロックンローラー内田裕也のほか、ビートたけし、原田芳雄、桃井かおり等々主役級の豪華な役者さんが顔を揃えます。
実のところ本作はDVD化されているのですが、ビデオやレーザーディスク版より4分ほどカットされたバージョンになっています。そんな事情から完全版は“なかなか観ることの叶わない作品”として取り上げました。

《コミック雑誌なんかいらない!》の製作年は1986年(昭和61年)。
この作品を語るとき、この製作年はとても重要です。
というのも、芸能レポーターの奮闘を描いた本作に登場する事件・事故の多くが製作前年の1985年(昭和60年)に実際に発生したものだから。
詐欺商法で高齢者を中心に荒稼ぎしていた豊田商事の会長宅に現れた二人の中年男性が突然、会長宅の窓ガラスを叩き壊し室内に乱入、会長を刃物でメッタ刺しにして殺害するという猟奇事件がテレビの生放送中に発生した《豊田商事会長刺殺事件》。
ロサンジェルスで1981年に銃の狙撃による女性の殺害事件が発生し、その夫に保険金殺人の疑惑の目が向けられ、日本中が真犯人探しに躍起になっている渦中、1985年9月、遂に疑惑の夫の逮捕に及んだ通称《ロス疑惑事件》・・・
バブル期に突入しようとしていた日本経済を背景に、にわかに浮かれた世で発生した“まるで映画を観ているような”劇場型犯罪の数々に私たちは釘付けになったものです。
コミック雑誌なんかいらない!

当時のことを回想して思うのは、過剰なマスコミ報道は人の生き死にまでをもエンターティメント化し、昨今でこそ“観たいひとだけ”がネットで観るような衝撃映像があたりまえのように、そして無責任にお茶の間に垂れ流されていた時代だったな、と。
≪コミック雑誌なんかいらない!≫はそんな世相に、実際の事件・事故映像のインサートや再現、事件当事者(本人!)の出演といった過激な手法で切り込んだ異色作と言えます。
アイドル歌手のスキャンダルから悲惨な事件・事故まで幅広く突撃取材する芸能レポーター《キナメリ》を演ずるのは内田裕也。
“見えない”視聴者の欲求を満たすために、“目の前”の対象に突撃取材する《キメナリ》の姿は、まるで己を伝説の騎士と思い込み風車に戦いを挑んだドン・キホーテの物語を観るようでもあります。
劇中、航空会社名は改変していますが、明らかに1985年に発生した日航機墜落事故を描き、事故現場を本作の制作班が撮影した映像の数々は正視に堪えない悲惨なもので、前述のDVD版からカットされた4分間とはまさにこの映像であったりします。
ほかにも抗争事件真っ只中の荒ぶる暴力団員や前述の《ロス疑惑》の被疑者本人への突撃取材など、実際に撮影したフッテージが多用されている本作は、《キメナリ》という架空のキャラクターの体験の数々が、実は製作に携わったスタッフ・キャストの実体験でもあるという仕掛けとともに、《豊田商事会長刺殺事件》のビートたけし演ずる殺人犯の犯行を止めようと《キメナリ》が事件現場に乗り込むといった、現実の事件に架空のキャラクターが介入する仕掛けは、《フォレスト・ガンプ 一期一会》に先駆けて取り入れられた斬新な手法とも言えます。
コミック雑誌なんかいらない!
惜しむらくは、裕也さんのストイック過ぎる演技かな・・・事件、事故の突撃取材の場数を踏むにつれて徐々に精神をすり減らしていく様がもう少しエモーショナルに描けていればな、と。

お次は以前にも本ブログで少しばかり触れた《スゥイートホーム》。
スゥイートホーム
《スゥイートホーム》公開時のパンフレットと前売券

監督は、いまや“世界の黒沢”といえば“明”のみならずこのひと。黒沢清です。
製作は1989年で、当時はまだ知る人ぞ知る映画監督だった黒沢清と、《マルサの女》や《たんぽぽ》などの監督作品で絶大なる評価を得ていた映画監督、俳優の伊丹十三がタッグを組んだ怪奇映画です。
因みに黒沢清監督は俗にホラー映画と呼ばれるジャンルを3つのカテゴリーに分類。
恐怖映画=現世(現実社会)で起こる異常体験を描いたもの
幻想映画=現世と異世界(俗にいう“あの世”)の境界線が曖昧模糊な異常体験を描いたもの
怪奇映画=明らかに異世界が現世を侵食し、現実社会が変容した異常体験を描いたもの
としており、その定義から言えば、《スゥイートホーム》は正に怪奇映画に分類される作品です。
物語は、伝説のフレスコ(壁画)画家が遺した幻の作品を撮影すべく山奥深い屋敷を訪れたテレビ取材班が体験する怪奇譚で、主演は山城新伍、宮本信子、伊丹十三に加えて、ロックバンド《レベッカ》のボーカリストNOKKOやニュースキャスターの古舘伊知郎ら異色のキャストが脇を固めます。
特筆すべきは、日本映画としては破格の製作費を投じた製作スタイル。
往年のハマーフィルム・プロダクションを彷彿させる大規模セットでの撮影や《エクソシスト》、《ゴッドファーザー》を手がけた特殊メイクアップアーティストのディック・スミスの起用など、ビンビンに伝わる製作陣の“本気度”に、当時上映が待ち遠しくてたまらなかった記憶が蘇ります。
適度に浮世離れした登場人物や物語も絶妙なれば、光と影の陰影を強調した恐ろしくも美しい映像やリアルかつオリジナリティに溢れた特殊効果も目を見張るものがあり、ニューウェーヴバンド《PSY・S(サイズ)》の松浦雅也が手がけた音楽もまた最高・・・そんな傑作なのに公開から30年近く経つ今なおDVD化されていないとは・・・残念です。
スゥイートホーム
スゥイートホーム
未DVD化の背景には、本作のビデオ化にともなう追加報酬を巡って問題が発生し、訴訟にまで発展したことがあるらしいのですが、プロデューサーを務めた伊丹十三さんが鬼籍入りしてしまった今となっては、そろそろDVD化されても良いのでは、と思いますが。
昨今の低予算故にさまざまな工夫を凝らしたJホラームービーも捨てがたいのですが、バブル期真っ只中の1980年代に多額の資金を投入して製作された、ハリウッド映画にも見劣りのしない日本の怪奇映画をぜひともハイクオリティな映像で観てみたいし、願わくば当時テレビで放送されたメイキング映像なんかも収録したDVD(またはブルーレイ)を発売してほしいと切に願いますとも!
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