back to TOP

admin |  RSS
“読んでから観るか。観てから読むか”
1970年代を知るひとなら懐かしいフレーズです。
雑誌や書籍の出版、映画製作で一世を風靡した角川書店の自社映画宣伝の際の惹句です。
角川映画
森村誠一原作の≪野生の証明≫は小説、映画ともに大ヒットしました。

どちらかと言えば、私は“読んでから観る”派です。
どうしても原作(小説)よりも映像化された作品の方が派手なストーリー展開になる傾向にありますので、映画化作品を観てからその原作本を読むと拍子抜けすることも多いですから。
大ヒット映画の≪ジョーズ≫でさえ、ピーター・ベンチリーの原作は、海洋学者フーパーと警察署長ブロディの奥さんとの不倫とか、どうでもいい描写が多いですし、何より映画化作品で全身の血がたぎったエンディングが原作ではと~っても地味なエンディングだったりして、やっぱり、どちらかと言えば“読んでから観る”派かなと。

「原作読んじゃったら、映画のストーリーを純粋に楽しめないでしょ」という意見もあります。
確かにそうなんですが、原作を読んでから観る映画は、登場人物の相関やストーリーはある程度掌握してますので、“あの小説をどのように映像化するのか”という、ちょっと引いた視点で映画を観ることができて、それはそれで楽しかったりします。
“ああ~あのシーン、こう描いたか~”とか“え~っ、展開をこんな風にアレンジしちゃったの~”とか。

もっともここ数年、映画の原作本は、映画関連商品の絶滅危惧種として、映画のコミカライズ作品共々買い集めてますが、読むためというよりはただひたすら収集が目的ですね。
映画 原作本
≪ハヤカワポケットブック≫シリーズは映画のワンシーンをあしらったブックカバーが魅力です。
映画 原作本
映画原作本の収集は主に1960年代、1970年代に出版されたものを中心に。
映画原作本
そんな私ですが、ひょんなことで現在公開中の映画≪残穢(ざんえ)≫の原作本を読む機会がありまして、映画化作品にも俄然興味が湧いたわけです。
≪残穢≫の原作は小野不由美さんが執筆、山本周五郎賞を受賞した作品です。
正直、はじめはその題字さえ読めませんでしたが、これがなかなか面白い・・・が、読み進めるほどに“この物語って小説としては面白いけど、どう映画化すんの・・・?”ってな疑問が・・・正直、映画向きの内容ではないな、と。
そこで今日、映画化作品≪残穢≫観て参りました。
残穢
ほぼ原作どおりの展開です。
ファンから寄せられた一通の手紙を発端に、とあるマンションで発生する怪異現象の調査を始める小説家の“私”。
どんどん時代を遡って怪異現象の原因を追及するうちに浮き彫りになる“穢(けが)れた”歴史の数々・・・
原作もそうですが、映画化作品も、ホラーというよりはミステリーのWhodunit( Who had done it) 的な展開が楽しめる作品です。
残穢
“おばちゃん”化した竹内結子さんが素敵過ぎます。

ただ、原作と映画化作品の明確な違いは、原作では怪異現象の原因をあくまで推論・推測として“穢れた”歴史にあると留めているのに対して、映画化作品では紛うことなき確信として描いている点にあります。
恐らくここが評価の分かれるところでしょうね。
私は、デヴィッド・フィンチャー監督の≪ゾディアック≫とかボン・ジュノ監督の≪殺人の追憶≫なんかの実録犯罪モノにみられる、調査の進展とともに事件の原因究明にかかるさまざまなピースが揃っていくのだけれど、真実の究明に向かっているのか、それともますます真実からかけ離れた迷宮に迷い込んでいるのかが分からなくなる混沌としたジレンマを快感とする体質ですから、映画化版≪残穢≫の“チカラ技”で観客に確信を突き付けるラストシーンは蛇足だな、と。
加えて、原作で読者の神経を逆撫でした、“穢れた”歴史による“障り”は土地や場所に固執するのではなく、疫病のように拡散していくという逃れようのない推論への言及が十分ではなかった映画化作品への不満もちょっとあります。
でも、手垢にまみれたモキュメンタリー的演出を避け、怪異現象に懐疑的な登場人物が叫び声を一度もあげることなく、極めて淡々と真実の究明に勤しむだけの風変わりなこの怪奇映画、私結構好きです。

それにしても、この≪残穢≫という作品、どこまでが実話なんでしょうか?
小説に登場する人物は、平山夢明さんとか、福澤徹三さんとか実在の作家さんだし、“生業を作家とする私”が作者の小野不由美さんであることは言うまでもありませんし・・・

世の中にはまだまだ知らないこと・・・というより知らなくて良いことがあるのかも知れませんね。


関連記事
スポンサーサイト
COMMENT FORM
URL:
comment:
password:
Trackback
トラックバックURL: http://hrex.blog.fc2.com/tb.php/120-889ee9d5
Template by :FRAZ